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【小説の神様】おすすめの志賀直哉作品の選び方&人気ランキング10選

文学作品を読んでみたいと思っても、何を読んでいいか判らないという方に志賀直哉の作品をおすすめします。「小説の神様」と呼ばれたり、「志賀直哉は日本文学の故郷」と言われるほど、読者に感動を与える作家です。名作が短編に多いのも初めての方におすすめできる理由です。

自分好みの志賀直哉作品を選ぶポイントは?

志賀直哉さんは、主に大正から昭和初期に活躍した白樺派の作家です。白樺派の作家のひとりとして、自身のアイデンティティーを貫き、その美しく巧みな描写で「小説の神様」とまで言われ次世代の作家にも多大な影響を与えました。

 

志賀直哉さんの作品は多くありますが、執筆された時期によってその雰囲気はかなり違ってきます。志賀直哉の青年期の作品は、“父との対立による内面の葛藤”という精神的な課題が、創作活動に大きな影響を受けたことが読み取れます。そして、父との和解を経た後の晩年のしみじみとした作風の随筆、短編など、その違いを感じてみるのもおすすめです。

 

また、志賀直哉さんの長編は長年かかって完成させた「暗夜行路」しかありませんが、短編は非常に沢山ありどれも名作ぞろいなので、普段はあまり本を読まないという方は短編の中から作品をえらんで読んでみるのもおすすめです。

読むべき志賀直哉作品の選び方

作品の長さで選ぼう

志賀直哉さんの作品には、数々の短編、中編作品と唯一の長編作品があります。とくに短編は名作と評価されるものが多いので、これから読み始める方にはおすすめです。自分の感性に合うものを選んでみましょう。

短編

志賀直哉さんの短編小説は名作とされるものが非常に多いです。処女作といえば普通はひとつですが、志賀直哉さんは「菜の花の小娘」、「或る朝」、「網走まで」という3つの短編作品が処女作であると公言していました。処女作というのは、その作家の出発点でもあり、帰結点でもあると言われることがありますので、この3つの処女作品は志賀文学のつかみとして読んでみることをおすすめします。

 

また、志賀直哉さんは晩年に随筆や短編作品を執筆しているので、初期の作品と晩年の作品の違いを読み比べてみるのもとてもおすすめです。

 

 

中編

志賀直哉さんの作品は短編がほとんどで、中編もさほど多くありません。しかし、その中でも「大津順吉」、「或る男、其姉の死」、「和解」は中編三部作と言われることがあります。

 

作者の志賀直哉さんは「大津順吉」、「或る男、其姉の死」、「和解」の3作品を一つの枝から生えた3つの枝のようなものと言っています。「大津順吉」で結婚問題を中心とした父との対立を描き、「和解」とつながり、「或る男、其姉の死」では「和解」で描かれんかった裏側の部分が描かれています。

 

「和解」は作者自身が、自分の今までの作品の中でも代表的な良いものと太鼓判を押しているので、読んでみることをおすすめします。

 

 

長編

志賀直哉さんの作品で長編小説と言えるのは「暗夜行路」ただ1つです。この作品の主人公「時任謙作」は作者である志賀直哉さんがモデルで、自分がこういう場合にはこう行動するだろう、こう行動したい、実際にそう行動するだろうということの集成、と作者自身が述べています。

 

志賀直哉さんの内面、精神性を知って、志賀直哉さんの作品をもっともっと楽しみたいと思っている方には絶対に読んでいただきたいおすすめ作品です。

 

また、鳥取の大山山上における自然描写は「絶賛に値する風景描写」と評価されています。

刊行年代で選ぼう

志賀直哉さんの作品はどれも素晴らしいものばかりですが、発表された年代で結構雰囲気が違っています。作者自身の実体験を基にした作品が多いことから、その時々の作者の精神性が読み取れるので、初期作品から順に読んでいくのもおすすめです。

初期の作品

志賀直哉さんの初期の作品は1910年に「網走まで」を発表してから1914年に「児を盗む話」を発表するまでに書かれた作品を言います。1914年から3年は創作活動を休んでいます。

 

「菜の花の小娘」、「或る朝」、「網走まで」の3つの処女作や、祖母の名前が冠された処女短編集「留女」には初期作品を代表するような10篇の短編小説が収められており、その中には自身や家族などの周りの人をモデルにした作品もあり、後の作品に続く父との対立も垣間見えることもありおすすめです。

 

処女作や初期の作品は作者を深く知るために読んでみることをおすすめします。

 

 

中期の作品

中期は1914年からの3年間の活動中止の後、1917年に「城の崎にて」で活動を再開してから1938年に「志賀直哉全集」を刊行するまでを言います。

 

中期の作品は、作者自身と周囲の関係をモデルにした私小説が多いと言われています。初期のころにあったような物語性のある作品少なくなり、サスペンス物のようなドラマチックな作品が好きな方にはおすすめです。

 

志賀直哉さんの代表作の「暗夜行路」や中編三部作など読み応えのあるものが多いので、じっくり楽しみたい方に中期の作品はぜひともおすすめしたいです。

後期の作品

後期作品とは第2次世界大戦の後から、1971年に89歳で亡くなるまでのあいだに創作されたものを言います。

 

志賀直哉さんは戦時下の言論統制のため、1942年から終戦まで創作を行いませんでした。終戦の翌年に発表された「灰色の月」では、戦争に対する自身の怒りと悲しみを見事に表現しています。また、引っ越した先の熱海の山荘で「山鳩」など数編を書き上げ、この作品を書いた1949年に文化勲章を受章しています。

 

晩年は随筆や小品がほとんどです。しかし、もともと志賀直哉さんの自然描写はたいへん素晴らしいですが、晩年の作品はその描写が円熟味を増し、素朴で優しい動植物の描写は短い作品でもいかんなく発揮されているのでおすすめです。

 

 

志賀直哉作品のおすすめランキング10選

10位 筑摩書房 『志賀直哉 [ちくま日本文学021] 』

価格:950円(税込)

赤西蠣太の恋の行方は?

この本の中に収録されている「赤西蠣太」は志賀直哉さんには珍しい歴史小説です。江戸時代にあった伊達騒動を題材にした作品です。

 

あらすじとしては、主君に命じられた主人公である赤西蠣太は、お家の乗っ取りを企てていた原田甲斐と伊達兵部を探るためその屋敷に潜入します。悪事の記した密書も粗方完成し、怪しまれず出ていくために同じ目的で潜入していた銀鮫鱒次郎に相談します。そこで、美しい腰元の小江に恋文を送り、わざと振られることで自身の面目が潰れて屋敷を出ても怪しまれなくなるように一計を案じます。しかし、小江は恋文を受け入れてしまって、というようなものになります。

 

この作品のテーマは伊達騒動という一大事件ではなく、その事件の裏側で忘れ去られがちな小江の気持ちや、蠣太の罪悪感やほのかな恋心を抱きながらも去らねばならない心情など、読む人の想像力を掻き立てる素晴らしい描写がおすすめです。

出版社筑摩書房ページ数480
形態文庫  

9位 岩波書店  『志賀直哉全集 〈第8巻〉 山鳩 朝の試写会』

価格:4,320円(税込)

1時間もかからずに書き上げられた名作「山鳩」

この本に収録されている「山鳩」という作品は、1949年に熱海山荘にてわずか1時間足らずで書かれた作品です。「連れ添いし相棒亡くした山鳩の姿に今の自分が重なる」という独特のはじまりかたもセンスを感じます。

 

あらすじとしては、作者自身が熱海山荘でつがいで飛ぶ山鳩をよく見ていました。ある時、訪ねてきた友人が猟で獲った山鳩を作者にご馳走します。知らずとはいえ、自分が食べたのがつがいの片割れであることを知り気に病む作者に友人は「そんなに気になるなら、残った方も片づけて上げましょうか?」というものです。

 

この作品は、作者の山鳩に対する慈愛や優しいまなざしが簡素で素朴ながらも読み手にじっくりと伝わってくる素晴らしい自然描写がおすすめの作品です。この「山鳩」のやさしい描写は、戦後の厳しい社会情勢の中にいる人々に大変評価され、同年に志賀直哉さんは文化勲章を授与されています。

出版社岩波書店ページ数414
形態単行本  

8位 岩波書店 『志賀直哉全集 〈第1巻〉 或る朝 網走まで』

価格:1,622円(税込)

志賀文学の原点、3つの処女作品を収録!

この本には「菜の花の小娘」、「或る朝」、「網走まで」の3つの処女作品が収録されています。「菜の花の小娘」はアンデルセン童話を愛読していた作者が、その影響をうけたメルヘンチックな作品です。次に「網走まで」は作者自身が列車に乗った時の実体験に、想像を付加させて書かれた作品です。最後に「或る朝」は作者自身の祖母に対する親愛が深く感じ取れますし、「和解」や「暗夜行路」につながる作品構成だったりがあるのでそちらを読む前に一読することをおすすめします。

 

ここでは志賀作品の発端ともいうべき「菜の花の小娘」を紹介します。あらすじとしては、ある春の日小娘が山に行くと、一輪だけで咲いている菜の花が呼んでいるのに気づきました。一人ぼっちで寂しいという菜の花の言葉を聞いて、麓の菜の花畑へ連れていくことを約束します。そして、無事に少女の家の畑に植えられた菜の花は、多くの仲間と幸せに暮らしましたというものです。

 

この作品は、小娘の豊かな感受性と温かい心、菜の花との心の触れ合いが美しい作品です。そして、菜の花が水に流れる描写などは、精緻な観察による自然描写の確かさが見て取れ、後につながる志賀文学の特色もしっかり読み取れるのでおすすめです。

出版社岩波書店ページ数396
形態単行本  

7位 角川文庫 『城の崎にて・小僧の神様』

価格:486円(税込)

作者の死生観を垣間見れる名作

この本に収録されている「城の崎にて」には前日譚的なものあり、作者自身が遭遇した電車事故が題材の「出来事」は電車にひかれかけた子供が助かったことに、乗客の皆が喜ぶ善良さが描かれた爽やかな小説です。この「出来事」の半年ほどあとに作者自身が電車事故の被害者となり、その養生先の城崎で書かれたのが「城の崎にて」です。

 

あらすじは、山の手線の電車にはねられ怪我をした自分は、その養生のために一人で城崎温泉に出かけた。養生先で一匹の蜂の死骸、首に魚串が刺さった鼠が石を投げられ必死で逃げている様を見て淋しい嫌な気持ちになった。別のある日、岩の上のイモリを驚かそうとして石を投げたらイモリに当たって死んでしまった。イモリは偶然死んだ、自分は電車事故でも偶然生き残った。これらの事から生きている自分が生と死について考察するというものです。

 

この作品は、名文として高い評価を受けています。中でも、作中に登場する動物の描写がとても簡潔でよどみなく、その死が迫ってくるようなリアリティがあるので、ぜひとも読んでみることをおすすめします。

 

 

出版社角川書店ページ数215
形態文庫  

6位 集英社文庫 『清兵衛と瓢箪・小僧の神様』

価格:514円(税込)

子供の情熱と親の無理解をユーモラスに描いた傑作

これに収録されている「清兵衛と瓢箪」は1913年に書かれた短編小説です。作者は父との不仲が原因で、家を出て尾道に引っ越しますが、これは尾道から四国へ渡る船の中で聞いた話を基に作られました

 

あらすじは、12歳の清兵衛は瓢箪に夢中で、いつも磨いたり眺めたりいた。父はそのことが面白くなく、清兵衛に小言を言うので清兵衛は反発して父を怒らせてしまう。ある日、とても見事な瓢箪を見つけた清兵衛はそれを購入し、学校にまで持ち歩く程に溺愛する。しかし、その瓢箪は担任に見つかり取り上げられ、そのことを知った父により家にあった瓢箪はすべて壊されてしまった。取り上げられた瓢箪は最終的には高額で豪家に買われた。清兵衛はその後、絵に熱中するが父はそのことにも小言を言い始めていると、いうものです。

 

この作品は、作者自身の父との対立が根底にはあります。自らの情熱、美意識というものの表れが瓢箪で、進むべき道への父の無理解を暗に表現していますが、この作品はユーモラスさも併せ持っており、清兵衛が尾道の裏通りで瓢箪を見つけた時の描写などはとても楽しくおすすめです。

出版社集英社ページ数260
形態文庫  

5位 岩波書店 『志賀直哉全集 〈第7巻〉 早春の旅 灰色の月』

価格:12,387円(税込)

戦争がもたらす深い悲しみを描いた作品

この本に収録されている「灰色の月」は1945年10月16日に作者自身が実際に体験したことを題材にした作品です。

 

あらすじは、戦後間もないころ電車に乗った作者が、体をゆすり続けながら座っている少年工と乗り合わせる。そのうち乗車してきた会社員が少年の様子を見て笑うが、別の乗客から餓死一歩手前であることを教えられ、何も言えなくなってしまう。少年工は乗り越したことを教えられるが「どうでもかまはねえや」と独り言をいう。作者も他の乗客も、気の毒には思うもどうすることもできず暗澹たる気持ちのまま下車する、というものです。

 

冒頭の「薄曇りの空のしたから灰色の月が日本橋側の焼け跡をぼんやり照らしていた。」という一節だけで、焦土と化した街並みを表現しきっています。そして、餓死寸前の少年を救ってやれない虚しさ、その原因となった戦争のむごたらしさが読み手にダイレクトに伝わってきます。

 

出版社岩波書店ページ数473
形態単行本  

4位 岩波文庫 『小僧の神様―他十篇』

価格:691円(税込)

自身の行いが偽善なのでは、と思い悩むAの葛藤

この本には志賀直哉さんが小説の神様と呼ばれるほどに評判を上げた作品、「小僧の神様」が収録されています。

 

あらすじは、秤屋で奉公している仙吉は番頭たちが噂している鮨屋に行ってみたいと思っていた。その後、使いの帰りに鮨屋に入るも金が足りず食べられなかった。それを見ていた貴族院の男(A)は秤屋に戻った仙吉をみつけ鮨をおごる。なぜか自分が行きたかった鮨屋を知っていて、そこで鮨をおごってくれたAを仙吉は神様思い始める。一方Aは良いことをしたはずなのに、なぜか罪悪感を覚えているのだった、というものです。

 

この小説のAが感じた罪悪感は明確にされていないので、読者にとって想像する余地が多く楽しいです。また、仙吉が鮨を手に取るも金が足らずに戻す描写などは本当におすすめです。

出版社岩波書店ページ数238
形態文庫  

3位 新潮文庫 『和解』

価格:464円(税込)

作者自身が代表作と自負する名作

この本には「和解」、「大津順吉」、「或る男、其姉の死」が収録されています。作者の志賀直哉さんは長年、父親と険悪な関係でした。ところが、1917年に父親と和解すると半月の間に一気に書き上げたのが「和解」です。

 

「和解」は父と不仲になっていた作者の志賀直哉さん自身を主人公の大津順吉に置き換えた私小説です。「和解」には不仲になった原因などは特に描かれていませんが、「大津順吉」で結婚問題を中心にした父との対立が描かれています。そして、「和解」で描かれなかった裏側が「或る男、其姉の死」で描かれています。

 

「和解」は「暗夜行路」などにもつながる、対立、葛藤、和解、調和というしっかりとした四段形式で展開し、和解の場面や、最後の料理屋にみんなで出かけた時の父と分かれる時の描写はその情景がありありと目に浮かぶような素晴らしいもので大変おすすめです。

出版社新潮社ページ数120
形態文庫  

2位 岩波文庫 『暗夜行路〈前篇〉』

価格:756円(税込)

志賀直哉の自伝的長編、その前編

おすすめの2位は1921年に発表された志賀直哉さん唯一の長編小説「暗夜行路」の前編です。

 

前編のあらすじとしては、主人公の時任健作は、祖父の女中であったお栄にすべてを任せ、放蕩の毎日を過ごす売れない小説家。尾道に引っ越して生活を改め、執筆活動に専念するようになる中で、お栄との結婚を望むようになり兄に手紙を送る。その返信で自身が祖父と母の不義の子であったこと、お栄が祖父の妾と知り思い悩む、といったものです。

 

口コミを見てみると、前編については評価の分かれるところが見られます。健作の怠惰でだらしなく、エゴイズムの塊のような態度を不快に思う方がいるのも理解できます。しかし、後編で登場する妻の直子と出会うことで、健作が自身を支配するエゴイズムから脱却するまでの過程がこの作品ではとても大きな位置を占めています。なので前編最後の健作が女性の乳房を触りながら叫ぶようなところも笑って楽しみましょう。

出版社岩波書店ページ数296
形態文庫  

1位 岩波文庫 『暗夜行路〈後篇〉』

価格:875円(税込)

構想から25年の歳月を費やして完結した志賀文学の集大成

おすすめの1位は2位の前編に続き「暗夜行路」の後編です。後編は前編の翌年から断続的に発表され、実に15年の長い時間がかかり完結しました。

 

後編のあらすじは、京都に転居した健作は直子という女性と結婚する。ある時、お栄が路頭に迷っていることを知ると、直子のすすめもありお栄を引き取ることにする。だが、健作がお栄を迎えに行っているうちに直子がいとこに犯されてしまう。直子に罪は無いことはわかっても、健作は悶々とした日々を送る。健作は鳥取の大山へ修行に向かう。そこで自然に触れるうちに精神の平静を取り戻し、曙光に素晴らしい感動を覚えた。下山とともに発病し、駆けつけた妻に手を取られたその顔は穏やかで、愛情に満ちたまなざしがあった、というものです。

 

この作品は健作が幸せを求めて苦悩する記録で、特に直子への愛とそれゆえの苦悩が読み手の心を捉える素晴らしい作品です。ラストに登場する大山での自然描写は日本文学史上最高との声もあり非常におすすめです。

 

 

出版社岩波書店ページ数343
形態文庫  

まとめ

今回は志賀直哉さんの作品のランキング10選を紹介しましたがいかかでしたか?短編から長編、時代小説から私小説、紀行文的なものまで様々な作品があります。まずは短編から試してみることをおすすめします。読んでみれば間違いなく別の作品を読んでみたくなりますよ。

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